2004年11月2日

北海道大学
学長 中村 睦男 殿

北海道大学教職員組合
執行委員長 伊藤 雄三

公 開 質 問 状

寒冷地手当引き下げに関する就業規則の不利益変更について

 本職員組合が標記の問題について団体交渉を申し入れたが、北海道大学は2度にわたる「交渉」で,引き下げの合理的理由を示さない不誠実な説明に終止した。その結果,現時点でも本組合と大学の間、なんらの合意も出来ていない。しかし,そういった状態であるにもかかわらず、北海道大学は就業規則変更を決定したとして、全学教職員に変更を周知する手続きに入った。本組合は,この状況を到底受け入れることは出来ない。本組合は,法人化後の北大経営の責任者である学長自身の見解の確認を求める。以下の事項に11月15日までに学長自身が誠実に回答されることを要求する。なお、本質問および学長による回答は、本組合のホームページで公開するとともに,道庁記者クラブ等を通じて広く公表することを予定している。

1.本年度から寒冷地手当の支給額を引き下げる必要性について

 4月以降北大の労使関係を規定している労基法体系下では本件のような就業規則の不利益変更は原則として認められておらず、不利益変更のためには「高度の必要性」に基づいた合理性が求められている(大曲農協事件,第四銀行事件)。2度にわたる「団体交渉」の中で、組合の質問に対して労務担当理事は、本年度の運営費交付金は従前の寒冷地手当額で算定され支給されていることを確認している。従って、本年度は北海道大学が従来どおりの額の寒冷地手当の支給をすることが可能のはずである。それにもかかわらず本年度から寒冷地手当を引き下げなければならない合理性のある必要性とはいったい何であるか。

 東大・九州大・福島大・山形大・富山大・天文台等は今年度の寒冷地手当の引き下げは予定していないと伝えられているが、これは就業規則の不利益変更に求められる合理性の根拠として上げられている「同業他社の状況」としてはどのように考えるか。

2.就業規則の不利益変更に際しての手続きの正当性について

 本件は就業規則の不利益変更であるにもかかわらず、過半数代表候補者に対して説明会を開催したのみであり、その他の全学教職員には事前に内容が一切説明されていない。職員課の説明によれば、今回は「給与法の内容が明らかでないため案が変更される可能性があった」という異常な理由によって、案を全学教職員に公表出来なかったという。3月の法人移行時でさえ,不十分とはいえ北大ホームページに就業規則案が掲載され、その上で過半数代表者に意見招請がされた。過半数代表者をその都度選出しなおさず、任期2年の常設の機関として扱っていることの根拠は、就業規則の変更案がその都度事前に全教職員に周知されることであると考える。このことから考えると今回の就業規則の不利益変更は手続き上も不当であり、撤回すべきであるが、これをどう説明するのか。

3.国立大学法人法について

 2回の「交渉」における労務担当理事の説明によれば、今回の就業規則の不利益変更は、国立大学法人法が準用する独立行政法人通則法が「社会一般の情勢に適合したものとなるよう定めなければならない」としていることを根拠としている。一方,法人化後の大学とその教職員の労使関係は勤務条件法定主義から労働基準法下での自主的労働条件決定関係に移行している。法律の専門家として、学長はこの関係をどう考えているのか。

 東大・九州大・福島大・山形大・富山大・天文台等は今年度の寒冷地手当の引き下げは予定していないと伝えられているが、これはこのこと自体で国立大学法人法違反であるか。

4.北大における労使関係について

 2回の「交渉」における労務担当理事の説明によれば、国立大学法人北海道大学は対等であるべき労使関係のさらに上位に人事院勧告を含む「社会一般の情勢」を置き、それを法人の賃金原則とすることを繰り返している。組合の質問に対して、労務担当理事は「あるから支払う、無いから支払わないということではない」としている。これは、国立大学法人北海道大学が、労働基準法が要請する労使自治に基づく良好な労使関係の構築を放棄していることを示すものであり、すなわち労使対等、労使自治という労使間の基本原則に対する認識が使用者側に希薄であった勤務条件法定主義の公務員の労使関係をそのまま引きずったものであると考える。労使自治の下で自らの労働条件について決めることができるということなくして、北大教職員が安心して、また,生きがいを持って北大で働くことは考えられないと考えるが、学長は法人化後の非公務員である北大教職員と大学の関係をどのように考えているのか。