2022年3月16日の団体交渉は「不利益変更に当たらない」とする大学の対応が不誠実交渉に当たるとの認識から、4月4日に北海道労働委員会に「あっせん」を申請し受理されました
2022年4月27日に北海道労働委員会のもとであっせんが行われ、あっせん案に双方が承諾しました。
2009年春の賃金不利益変更に係る労働委員会での争議は、北海道大学が北海道大学教職員組合に対しての不誠実団体交渉と支配介入の命令書が交付されました。
2009年5月から2011年6月までのとりくみの経過を冊子にまとめ、2011年7月に「2009年北大不当労働行為事件の経過」として発刊しました。
2006年7月13日 寒冷地手当問題で大学との和解成立
2006年6月26日 寒冷地手当不当引下げに対する道労委での和解交渉
開催日 | 審問内容・報告(要旨) | 審問調書 | 傍聴ポスター | |
第1回 | 05/09/29 | 組合側証人(渡邉副委員長)に対する主尋問 | pdf 全28頁 | ポスター1 |
第2回 | 05/11/08 | 組合側証人(渡邉副委員長)に対する反対尋問 | pdf 全44頁 | ポスター2 |
第3回 | 05/12/07 | 大学側証人(斉藤理事・前事務局長)に対する主尋問・反対尋問 | pdf 全48頁 | |
第4回 | 06/03/15 | 組合側証人(渡邉副委員長)に対する主尋問・反対尋問 | pdf 全26頁 | ポスター3 |
第5回 | 06/04/11 | 大学側証人(遠藤理事・事務局長)に対する主尋問・反対尋問 | pdf 全35頁 |
2005年5月26日、北海道労働委員会に「不当労働行為救済」申立て
04年寒冷地手当減額の人事院勧告が提示されたことを受け、北大の使用者側は「勧告」通りに実施するよう就業規則の改変をおこないました。
私達組合は不当な改変に対して2度の団体交渉で、寒冷地手当減額の納得できる正当な理由の明示を求めましたが、使用者側は、「北大の給与原則は公務員準拠」であり、また「大学法人の給与は社会一般の情勢に従うことが通則法によって要請されており、人事院勧告が社会一般情勢を反映している物差である」との回答に終始しました。組合としては、大学経営との関係で具体的にどのような理由で寒冷地手当の削減額を決定するのかが示されれば使用者側との協議に応じることが出来ましたが、減額で生じる1.2億円の使途についても「年度末になってみないと分からない」、「それが経営というもの」という非常に不誠実な回答しかありませんでした。
この間人事院勧告について国会で国家公務員給与法の審議開始の段階から大学使用者側は減額の基本方針を定め、9月13日の役員会および10月4日の経営協議会で教職員の寒冷地手当削減方針を確認し、第2回の団交開始直前10月25日に役員会で決定し、10月末日に実施しました。
このような使用者側の対応に対して、「労使自治」による交渉で状況を解決出来ないと判断し、2004年11月26日、「一方的寒冷地手当引き下げの就業規則変更を無効とすること」と「誠実な団体交渉の実現」を求め、組合は「あっせん」を北海道地方労働委員会に申し立てしました。道地労委事務局の示唆で行われた同年12月22日の団体交渉でも、使用者側はそれまで2回にわたる組合との団体交渉での姿勢に変化がなかったこと、続く今年2月23日の地労委が設けた「あっせんの場」においても、減額条件で一切歩み寄る意志を示さなかったことから判断して、これ以上は「あっせん」の進展が見込めないとして3月7日に「あっせん申請」を取り下げました。
これまでの経緯では公務員準拠・人勧準拠が曲げられない給与原則であると主張する大学使用者は、国家公務員給与法に従って手当を削減するという方針を役員会および経営協議会で決定した上で、組合との「団体交渉」に臨んでおり、当初から教職員・組合と具体的内容での協議をする意思が無かったことが明白となっています。これは、実質的な団交拒否・組合無視とも言うべき対応で、明らかに不当労働行為に相当します。道労働委員会の示唆による最後の団交の場でも、労務担当理事は「今年度は支払う財源はある」、「就業規則の不利益変更であることは承知している」、「しかし、支払わない」と言い放ちました。これは独立した法人として正常な労使間の協議を行なう意志が全くないことを示しています。
国立大学法人北海道大学の使用者と教職員の労使関係を規定する法的枠組みは労働基準法以外には存在しません。契約内容が労働者に不利益となる変更の際には、過去の判例法理でも「高度の必要性に基づいた合理性のあること」が要請されています。寒冷地手当減額の場合、手当額相当が既に交付されており、従来通りに手当支給が可能という財政条件がありました。労基法下では、労働条件の決定は、職務の特殊性等個別企業・法人の事情に応じて、個々の企業・法人の労使が主体的に決定する「労使自治」が基本であり(労基法はその第2条において「労働条件は、労働者と使用者が対等の立場において決定すべきものである」としています。)団交での労務担当理事の説明などを通して分かるのは、労使対等・労使自治という労使間の基本原則に対する認識が使用者側に希薄であって、勤務条件を法定主義とする旧来の公務員としての労使関係をそのまま引きずったものであり、北大教職員組合としては到底受け入れることはできません。
これまでの事態は、使用者側が形式的に団体交渉に応じているだけであり、労組法が禁じている「組合に対する不当労働行為」、「支配介入」にあたる理由から、4月13日の臨時大会で「給与・手当問題対策の取り組みについて」を提案し、その討議の結果を踏まえて、使用者側と労働者側の交渉の在り方と誠実交渉をただす方向である「不当労働行為の救済」と「団体交渉を経ずに給与規程を改定しないこと」等の内容で北海道労働委員会に2005年5月26日申し立てました。
(北海道大学教職員組合2005年度定期大会(2005.7.23)議案より)
2005年12月7日、北海道労働委員会に「不当労働行為救済」追加申立て05年人事院勧告は、(1)2005年度からの実施を勧告する部分と、(2)2006年度以降の実施を勧告する部分の2つに分かれており、このうち(1)は、「官民の給与較差に基づく給与改定」として国家公務員の月例基本給の0.3%引き下げと配偶者扶養手当500円の引き下げ、そして勤勉手当についての0.05月分の引き上げを主な内容としていました。
10月27日、別件について組合の申し入れた団体交渉終了後に人事院勧告についての「懇談会」がありました。これは大学側の要請によるものです。大学はこの懇談会で運営費交付金の退職金部分と国家公務員給与との関係、すなわち「人事院勧告と大きく異なる措置をすると退職金について大学が差額を負担することになること」の説明をしました。しかし大学は、今回の0.3%の給与引き下げを実施しない場合に大学が差額負担することになる具体の金額を組合に提示し、引き下げなければどのように大学経営が立ち行かなくなるのかといったことについての説明は全くありませんでした。またこの時点では、大学は、まだ改正予定の給与法に従って大学が職員給与規程を改定するかどうかは決めていないとのことでした。
大学は11月9日に職員給与規程の改定について、過半数代表候補者に対する説明会を行うことを決めました。11月4日、職員課長が組合書記長に改正給与法に準じて大学の職員給与規程を改定する旨の、実施時期を「平成17年12月1日」と明記した「改正の骨子」が書かれた紙を渡し、11月9日の過半数代表候補者に対する「説明会」の後に組合にも説明会を行うと伝えました。その際、組合からの申し入れがあればこれを団交にしても良いという案を示しました。これは、法人化後初めての基本給の改定案件であるにも関わらず、大学は組合から団交を申し入れて来い、申し入れがあれば11月9日の説明会を団交にしてもよいという態度でした。先の「懇談会」は大学側から提案しておきながら、団交は組合から申し入れて来いという態度です。教職員の給与を不利益に変更する提案をしようとしているにもかかわらずです。
一方、この間11月4日付けで、大学は、ホームページに「平成17年度の職員給与の改正(案)について(お知らせ)」を掲載しました。驚くべきことに、その中には改正の実施時期が平成17年12月1日と明記されています。組合への交渉も申し入れず、従って一度も交渉を持たないうちに「改正」内容を実施時期まで含めて学内に公表したのです。
給与を引き下げる提案ですから、組合は大学から交渉申し入れがあるべきと考えます。しかし、非常に残念ながら大学からの交渉申し入れの見込みがないと判断したため、11月17日、組合はやむを得ず大学に対して団体交渉を申し入れました。11月22日に開催された団体交渉では、組合は、今回の職員給与規程改定は基本給の減額を含んでおり、極めて重要な労働条件の変更であるにもかかわらず12月1日実施が前提とされていることに対して、労使の十分な協議を保障するものではない旨を抗議し、12月1日実施を保留にして十分協議するよう求めました。しかし、それに対して、大学は、法人化後も大学は「国の組織であることは変わりない」旨を述べて、あくまでも改正給与法に準じて職員給与規程を改定し12月1日に実施することに固執しました。組合は、平成16年度における人事院勧告準拠の寒冷地手当削減と同様、始めに「期限」すなわち「必ず実施する」という曲げない態度を示して「交渉」しようという大学の姿勢に強く抗議しました。
その後11月28日に持たれた2回目の団体交渉においても、大学は「組合への説明が11月に入ってからと遅かったことは反省している」と言いつつも、「延期はあり得ない。受け入れていただけなくとも、実施させていただく」「明日、明後日中に役員会の了承を得て労働基準監督署に就業規則改正の手続きをする」と述べて、実質的な協議は一切なされませんでした。結局大学は、組合との実質的な協議がなされないまま、12月1日に基本給引き下げを実施しました。
このように11月22日と11月28日に実施された団体交渉において、大学は改定職員給与規程の12月1日実施を当然の前提としており、組合と協議した上で合意を達成する意思が全くなかったことは明白です。現在、人事院勧告準拠の寒冷地手当削減について、北海道労働委員会の場で争っている最中にもかかわらずです。人事院勧告を受けて改定された給与法に準じて職員給与規程の変更を一方的に実施した行為は、労働組合の存在を否定し、労使対等の立場で労働条件を決定することを否定していると言えます。組合は、2005年12月7日この間の経緯を北海道労働委員会に追加申立てしました。